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仙台家庭裁判所 昭和56年(少)2673号 決定 1981年12月04日

少年 B・R(昭三九・四・三〇生)

主文

少年を医療少年院に送致する。

理由

(非行事実)

昭和五六年一一月一三日付司法警察員作成の少年事件送致書中審判に付すべき事由欄記載のとおりであつて、このまま放置すればバイクの窃盗及びその無免許運転等の罪を重ねる虞があるものである。

(法令の適用)

少年法三条一項三号イ、ロ、ハ、ニ

(処遇の理由)

少年は、聾唖者であつて、幼時に父母が離別し、母親に引き取られた後聾学校の寮などで成育したが、時折り実父を探して家出し放浪することがあり、そのうち、バイクの運転に対する強い興味を覚えるに至り、遂にバイクの窃盗事件で観護措置決定のうえ、昭和五六年九月三〇日保護観察処分に付したものであるが、審判後引き取つた母親の元から間もなく家出し、聾学校時代の友人等と共に浮浪し、暴走族と接触したりしたことや、バイク窃盗の余罪もあるようで、その非行性は漸次進行していると認められる。ところが、実父は現在も行方不明であり、母親は現夫との関係もあつてか、少年の処遇に困惑しているのが現状である。

しかしながら、少年は知能はそれ程低くはないが、聾唖の障害の故か、自我の構造が固く、特定の欲求に固執する傾向を有し、それがバイク盗及びその運転の反復となつて顕れているものと認められる。しかしながら、それ以上に一般犯罪への拡張の傾向が顕著であるとまでは現段階では認められない。従つて、少年の収容期間については、基本的な社会生活への適応性を体得せしめると共に自立への心構えを確立させるのに必要な程度をもつて妥当とし、それ以上に長期に亘るのは避けるのが望ましかろうと考えられる。

以上の次第であるので、少年を医療少年院に送致するを相当と認め、少年法二四条一項三号、同規則三七条一項により、主文のとおり決定する。

(裁判官 立川共生)

少年の環境調整に関する措置

仙台保護観察所長殿

本籍 宮城県名取市○○字○○×番地の×

住居 仙台市○○×丁目××番×号

少年 B・R

昭和三九年四月三〇日生

上記少年につき、当裁判所は昭和五六年一二月四日医療少年院送致の決定をしたが、別添決定書写記載のとおり、少年は聾唖者であるうえ、その家庭の保護態勢が十分ではないところ、少年の仮退院は比較的早期と予想されるので、これに備えて、少年の帰住先としての家庭のあり方に関する指導、調整(特に、母親の少年に対する愛情と忍耐をもつてする監護、継父の少年に対する対処、居所を転々とする実父に対する少年の心理的葛藤を軽快させる方策)並びに障害を有する少年に適した稼働先の開拓につき、必要な措置を講ずること。なお、その他必要な具体的事項については、当庁家庭裁判所調査官をして連絡に当らせる。

以上のとおり、少年法二四条二項に則り、環境調整の措置を行わせることとする。

昭和五六年一二月八日

仙台家庭裁判所

裁判官 立川共生

〔参考一〕 司法警察員送致書記載の審判に付すべき事由

少年B・Rは、宮城県○○ろう学校高等部を一年で中退し無職のものであるが、本年九月四日家庭裁判所の観護措置により仙台鑑別所に入所した。

一〇月三日保護観察処分となつたが翌一〇月四日からふたたび家出し一一月一日の深夜塩釜市内を徘徊しているところを○○警察署で補導を受け迎えにきた母親と帰宅途中家出し、本日午前七時四〇分ころ仙台市○町×丁目×番×号先路上においてオートバイを無免許で運転中発見保護したものである。

以上の行為は少年法第三条第一項第三号イ、ロ、ハ、ニに該当し少年をこのまま放置すれば将来窃盗の罪をおかすおそれある少年である。

〔参考二〕 少年調査票<省略>

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